飛鳥浄御原宮での天武天皇
(2)伊勢神宮の式年遷宮の始まり

   伊勢神宮の内宮と外宮の社殿の創建および式年遷宮と斎王の制度化は、壬申の乱での戦勝に対する天武天皇の報恩であろう。具体的には、大伯皇女の伊勢派遣、天武十四年(685年)式年遷宮の制定、持統四年(690年)第一回内宮式年遷宮、持統六年(692年)第一回外宮式年遷宮が行われる。この時に、現在に至る唯一神明造の社殿が創建されたのであろう。伊勢神宮での天照大神の奉祭と斎王派遣は、天武朝が最初とする意見があるが、私は賛同しない。垂仁朝での、天照大神の伊勢神宮鎮座を無視できる理由がないからである。また、倭姫以降、代々の天皇の皇女が斎王を務めている。五百野皇女(景行天皇)、栲幡皇女(雄略天皇)、荳角皇女(継体天皇)など歴代の斎王を無視する理由も無い。既に、天照大神の伊勢鎮座を詳細に論考しているので、ここでは省略する。なお、天平時代末、悲しい斎王の物語がある。それは、後述する。